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笹幸恵
2024.11.24 01:08日々の出来事

『SPA!』倉山記事、内弁慶の自己慰撫に終始

今週『SPA!』の倉山記事。
相変わらず「放言 無責任スタイル」は健在だ。

冒頭で19世紀のヨーロッパの話を持ち出し、
タレーランがどうの、メッテルニヒがどうの、
パーマストンがどうの…。
そんな彼らと日本の最近の首相を比較してヒョーロン。
居酒屋談義レベルを、上から目線どころか
神から目線のような物言いで書くから驚く。

もっと意味がわからないのが後半。

岸田前首相が踏み込んだ防衛費倍増と防衛力の抜本的強化について
こう記している。

「そこに国家意思があるか。同じことでも、
『決められたことだからやる』のと
大国に戻る意思を持ってやる』だと、後で結果が違う」

同じ文意を、もう一度繰り返している。
「防衛費倍増・防衛計画抜本見直しで何をする気か。
属国として宿題をこなすのと、大国に戻る意思
日本国の合意にするのとで、意味が違う」


大国に戻る意思ってなんだ???
文脈からして軍事大国を指しているのか。
属国とか大国などと書くならば、せめて、軍隊を持って
真に独立すること云々…といった話にならないとおかしい。
それこそが大国の姿である、と示さないと読者置いてけぼり。
しかし、いつの間にやらアメリカ経済、日本経済の話に移り、
最後はこれ。

「日本こそ減税と規制緩和でデフレ脱却を確実にさせれば、
何も怖くない。問題は国民の決心だけだ」


うん? 大国どこいった???

具体的かつ厳密な定義を示さないまま、
あるワードを連発するのは、本人も言葉にできないから。
本当の意味をわかっていない(考えていない)から。
だからアメリカ経済の話へと論点をずらし、
日本は減税と規制緩和さえすればデフレ脱却が
できるかのような単純化した結びになっていく。

デフレ脱却が大国の証か?
ならば経済大国の話だったのか?
こうして読者に謎かけをしたまま
文章を綴っていくのは悪文の典型だ。

そういえば、先週号でも
倉山は無意味な政治ヒョーロンの締めに
こう言っていた。

「大国に戻る気分で構えていよう」

単なるブームか。 ばかばかしい。

言葉と真摯に向き合わず、虚勢を張るためだけのワードを
連発するような輩は言論人ではない。
ふんわりした「大国」という言葉に酔って、
俺たちってすごいんだぜ、という気分に浸っていたいだけ。
無責任極まりない。
こんな幼稚な「言いっぱなし」、世にとって害悪ですらある。

内弁慶の自己慰撫記事なんか、読ませてどうする。
編集者は、編集の仕事をしなさい。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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